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2025-07-23FUJIMAX JDM Car Rentalは、2010年式のFN2型ホンダ シビック タイプRユーロのレンタルを10月1日より開始します。
最後の3ドアハッチバックを持つシビック タイプR
シビックはホンダの世界戦略を担うベーシックモデルであり、その歴史は1972年の初代まで遡ります。シビック タイプRは、そんなシビックをメーカー自らがエンジンやボディにハードなチューニングしたホットモデルです。
1997年に登場した初代シビック タイプR(EK9型)の登場より、シビック タイプRはホンダのFFスポーツカーとして不動の地位を確立しました。2代目のEP3型、そして3代目のFD2型が日本国内で投入される中、ヨーロッパ仕様のシビック タイプRとして投入されたのが、FN2型シビック タイプRです。

2代目までは3ドアハッチバックのボディを持っていたシビック タイプRですが、その頃の日本では3ドア車の人気は下火でした。このため日本国内では、3代目となるFD2からは4ドアセダン車として生まれ変わりました。
しかし、1972年から脈々と続くシビックは、人々の生活を支えるベーシックモデルとして3ドアハッチバックであり続けてきました。やはりシビックは3ドアでなければならない。そのような声に応え、2008年にFN2型シビック タイプRの日本国内での限定販売が発表されました。

シビック タイプRユーロは、2009年に2010台、2010年に1500台が限定販売されました。つまり日本国内ではわずか3510台しか販売されていない非常にレアなスポーツカーです。そしてFN2以降3ドアのシビックは生産されていないことから、現時点で最後の3ドアシビックでもあります。
時代に翻弄された不遇の名車
しかし2008年にはリーマンショックという世界的な金融危機が発生していました。FN2を生産するホンダのイギリス工場も稼働休止に追い込まれ、本来であれば2009年春からの販売の予定が2009年11月に延期されました。
さらにリーマンショックによる世界的な大不況の煽りを受け、日本国内での販売も伸び悩みました。わずか3510台の限定販売にもかかわらず、最終的には2012年6月まで販売が継続していました。
FD2型シビック タイプRとの差異
FN2が販売に伸び悩んだのは、日本仕様であるFD2型シビック タイプRとの性能差にあるとも言われています。この2台が同時期にほぼ同価格で販売されていたのは、FN2にとっては悲劇だったかもしれません。

どちらも同じVTEC搭載の2L直列4気筒自然吸気エンジンであるK20Aを有していますが、FD2は225馬力を発生していたのに対し、FN2は201馬力と控え目な数値になっています。これは圧縮比の差や、FD2は振動抑制のバランサーシャフトを撤去してまでもフリクションロスの低減や高回転での出力アップに拘ったためです。
更に車重もFD2の1270kgでしたが、FN2は+50kgとなる1320kgになっていました。FD2は軽量化を追求し遮音材などの快適装備を省いていますが、FN2は快適装備を維持していたことが原因です。
さらにFD2はリアサスペンションがダブルウィッシュボーン式であったのに対し、FN2はトーションビーム式でした。これはFN2のプラットフォームが当時のフィットをベースにしていたことに由来します。

これら車両スペックの差により、「FN2はFD2に劣る」という評価をされがちです。しかし、これはFN2のごく一部を見て判断しているに過ぎません。FN2という車の素晴らしさは、実際に乗ってみて初めて実感できるものです。
「移動体としての最速」を体現したFN2
歴代シビック タイプRは「サーキットでの最速」を目指したのに対し、FN2は「移動体としての最速」を体現しました。タイプRとしてのレーシングマインドを持ちつつも、ヨーロッパの高い制限速度や長い走行距離、その道中を楽しむ文化をリスペクトした「旅するタイプR」。それがFN2です。

K20A型エンジンは当時のホンダ車に多く搭載されたエンジンですが、FN2に搭載されるそれはどのホンダ車とも違うファインチューニングが施されています。常用域では自然吸気の2Lエンジンとは思えないほど豊かなトルクとレスポンスを持つ一方で、VTECが作動する高回転域では突き抜けるような加速と回転フィールを魅せます。
100馬力/1Lを超えるスペックのK20Aは、紛れもなくレーシングエンジンです。そこに組み合わさるクロスレシオの6速マニュアルトランスミッションにはヘリカルLSDが標準装備。K20Aのパワーを確実に路面に伝え、強力にボディを引っ張っていきます。
3ドアハッチバックのボディは徹底的に強化され、ファクトリーチューンでなければできないほど多数のスポット溶接が施されています。これによりサスペンションを有効に機能させ、シャープなハンドリングを獲得しました。

SACHS製ダンパーを持つFN2のサスペンションは市販車としては若干硬めのテイストです。しかし、路面の凹凸はドライバーに伝えつつも、不愉快な揺れや突き上げ感はありません。アルミ製のフロントロアアームはバネ下重量の軽量化にも貢献しています。しなやかに動く脚回りはフラット感のある走りを実現し、ドライバーにワインディングロードを走る喜びを与えます。
ステアリングの反応の良さはもちろんですが、驚くべきはリアサスペンションの追従性の高さです。スタビライザーにより強化されたトーションビームはタイヤを路面に粘りつくように押さえつけ、高い旋回性能を実現しています。実はこのリアサスペンションは、2015年にニュルブルクリンク北コースで量産FF車最速タイムを記録したFK2型シビック タイプRと同じです。
空力にも拘り、巨大なアンダーカバーの装着によりほぼフラットボトムのアンダーボディを実現。タイプR専用のエアロパーツをふんだんに奢った結果、高速域での高いスタビリティと低ドラッグを両立。カタログ上の最高速度は235km/hですが、実際には260km/hに達するとも言われています。
日本刀をイメージしたシャープな外観

FN2のデザインは日本刀をモチーフにしています。それを最も表しているのが左右に細長く広がるヘッドライトです。当時としてはかなり細く、そして長く弓なりなヘッドライトは、切れ味抜群の名刀のようです。それが車体の低い位置にあることからも、スポーティーな印象を与えます。左右に伸びるテールランプも同様の意匠です。
卵型のシルエットをしていますが、各部の意匠は直線で区切られています。ボンネットやリアハッチの継ぎ目、ボディサイドに走るキャラクターラインはくっきりとした直線を描き、まるで日本刀でスパッと切り落とされたかのような美しさを持っています。
スポーティーさと実用性を両立した内装

FN2はタイプRの文法に則り、赤×黒を基調としたデザインが施されています。キーを捻ってからスタートボタンを押す、S2000などと同様の独特のエンジン始動方式を採用しています。
フロントシートはセミバケット形状でしっかりとしたホールド力を持ちます。センタータンクレイアウト故に着座位置は若干高いですが、運転しやすいシートポジションに設定可能です。アルミ製シフトノブはハンドルから近い位置にあり、小気味よいシフト操作を楽しめます。

ダッシュボードはこの頃のホンダによく採用されていた2段式メーターで、上部にスピードメーター、下部にタコメーターが装備。メーターは全体的に赤基調で、VTEC作動時にはインジケーターが光ります。
運転席側のダッシュボードはまるで戦闘機のコックピットのようにドライバーに向けられ、ドライビングに集中できます。しかし一方で左右独立のフルオートエアコンや、多数の小物入れなど快適装備も充実しています。

3ドアとは思えないほどリアシートは広いので、大人の4名乗車も余裕です。トランクも十分に広く、リアシートを倒せば広大な荷室が広がります。4人での小旅行はもちろん、2人でのグランドツーリングを十二分に実現できます。
FN2の世界観は現在にこそ輝く
ほとんどの場合スポーツカーには「軽量・高出力」が求められます。特に軽量というのは多大な効果を発揮するため、ドライバーへの負担を無視してでも軽量化を追求する風潮がかつて存在しました。一方で2025年の現在では、技術の進歩により快適性能とスピードの両立が可能となった部分もあります。
赤いホンダのエンブレムを掲げ、レーシングの「R」を名乗るタイプR。それはサーキットで鍛錬を重ね、レーシングカーのテイストと圧倒的なドライビングプレジャーの獲得を目指す、日本生まれのピュアスポーツです。

「旅するタイプR」であるFN2は、1990年代の残り香があった発売当時には、スポーツカー好きには受け入れられない存在だったかもしれません。しかしこの車にはタイプRとしての誇りと、それを実証する確かな性能が備わっています。スペックでは語れない魅力は、乗って初めて理解できるでしょう。
タイプRの中でも異質な存在であるFN2。しかしその魅力は、日本発売から16年を経った現代にこそ輝きます。ぜひ当店のレンタカーであるシビック タイプRユーロで、九州の素晴らしい道を旅してください。